その日綴り

私の備忘録

不器用母ちゃん弁当

今週のお題「お弁当」

 

不器用母ちゃん

私の母ちゃんはとっても不器用だ。

細かい作業や事務作業は苦手で避けて生きてる。洗濯と掃除は毎日きっちりしていたけれど、縫物なんかもってのほか。

子どもの頃学校に持っていく雑巾も縫わずに買っていたし、私と兄の服の穴も大きなアップリケがガタガタに縫われて塞がれていた。しょっちゅう服のボタンを飛ばしてしまう父ちゃんは「いい加減にしろ!毎度毎度ボタン飛ばしやがって!!もう絶対ボタンなんかつけてやらねぇから!」と母ちゃんの怒りを買ってしまいそのうち自分で縫い付ける様になった。

 

そんな母ちゃんは料理もすっごく苦手で大嫌い。

料理中に「やりたくな~い!!」「料理きら~い!!」と叫んでいたし、「なんもしたくねぇ歌」という歌を自作して良く歌っている。いまも。

母ちゃんは三角おにぎりを握れなかったのでおにぎりはいっつも楕円。手作りお菓子なんか作ってくれたこともなく「買った方が美味いし安い」と言われた。

そんな母ちゃんのお弁当はいつも冷凍食品でいっぱい。

手作りは卵焼きだけなんて日もよくあって、茶色い冷凍食品が詰め込まれた2段弁当は年頃の私にとって少し恥ずかしいお弁当だった。カラフルなお弁当にしてと文句を一回言ったことがあるけれど、次の日塩コショウで炒めたミックスベジタブルが入っていたので可愛いお弁当は早々に諦めることになったのだ。

そんな中の唯一の手作り卵焼きもよく異物が混入してあって、卵の殻なら可愛いもので食器洗いスポンジの切れ端や金タワシの一部、菜箸の先っちょ、何かのプラスチック…などなど、どうやったら入るのよと突っ込みたくなる卵焼き。

 母ちゃんに文句を言うと「あら~大当たりね~」なんて返ってきた。

でも時々海苔やカニカマが入った特別な卵焼きがあったり、私が好きだと言ったおかずを忘れずにいれてくれていたり、毎日絶対忘れることなく作ってくれたお弁当。

あの頃はちょっと恥ずかしかった弁当も今思えば優しい母ちゃんの頑張りと愛情の塊だったのだなと思う。

 

私はもう家を出てしまって母ちゃんの楕円のおにぎりもお弁当も食べられないけれど、今度は自分でお弁当を作るようになった。

焼き鮭、ほうれん草のおひたし、シイタケのバター醤油焼き、きんぴら、ひじきの煮物、手羽中のこんがり焼き、小さなコロッケ……自分で作ってせっせと詰める。

母ちゃんの弁当で育ったのに母ちゃんの弁当とは全然違う私の弁当。卵焼きが上手く巻けないのは今のところご愛敬として見て見ぬフリを続行中。

 

卵焼きを巻くコツを電話で聞いたら「ひたすら巻いて巻いて巻くのよ。練習あるのみ。数こなしなさい。まぁ、卵焼きなんて食べれればいいのよ」なんて適当な答えが母ちゃんらしかったりして。