その日綴り

私の備忘録

ASD妻と宇宙人夫

2021年7月8日に私は変わり者の宇宙人と入籍した。

 

私はASD自閉スペクトラム症アスペルガー症候群)だ。

ASDとは対人関係が苦手・強いこだわりといった特徴をもつ発達障害の一つで生まれつきの脳機能の異常だと言われている。

ASDだと診断されたのは大学生の時、いわゆる大人のは発達障害というやつだ。

しかも私の場合は「うつ病」の治療で通っていた過程で判明した発達障害だった。

一般的にASDの人は“変わり者”と呼ばれてしまうことが多いため排除の対象になりやすい。そのためイジメや嫌がらせの標的になり心を病んでしまうケースが多いのだ。

私もそのうちの一人だった。

そうして私はうつ病改善のためにメンタルクリニックの門をたたいたのが始まりだ。

 

みんな宇宙人だと思えばいいんだよ

 あれ?なんか生き辛くね?と常々感じて生きていたけれどまさか自分が発達障害だなんて思いもしなかった。

でも不思議と発達障害の特徴と今までの生き辛さがカチっとハマったのです。

こりゃあ生き辛いわけだ!と納得をして、そのあとは自分のできることできないことを見直して暮らす日々。

だけど生き辛さは完全に消えたりせず、人間関係は悪化していく一方。

女子が群れを成してトイレに進軍するのに同行しないと怒られたり、みんなが選ぶものと別のものを選んで嫌な顔されたり、友達と買い物中に他のものが気になってフラっと見に行ったら怒られたり……なんでこうしなきゃいけないのか理由がわからない。

わからないから私がそれをやる意味も理由もないと思ってしまい、周りからどんどんズレて嫌な顔をされる…の繰り返し。

そして最後は空気が読めないと罵られる羽目になる。

みんな超音波でじつはこっそり意思を伝えあって話し合いしているのでは…?と疑いたくなるほどみんなの行動がわからない…。

気分は異星にやってきた宇宙人。地球の文化もみんなが言っていることも全然理解ができない宇宙人の私。

悩んで悩んで悩んでも宇宙人の私には一向に解決できない謎。

 

悩みすぎてよくわからなくなってカウンセリングの先生にこの疑問をぶつけたらケロッと一言「むしろ逆に考えて自分以外、みんな宇宙人だと思えばいいんだよ」と。

 

私以外はみんな宇宙人で地球人の私には宇宙人が考えてることなんかわかんないし、謎の行動もいっぱいある。

だけどそんな宇宙人と私は仲良くしなきゃいけない。

そしたら仕方がないから宇宙人の常識にの少なからず合わせて行動しなきゃいけないのだ。

宇宙人が全員でトイレに行くツレション文化があるとしてもそんな理由はわからない。でも仲良くなりたいからとりあえず一緒に行く。とりあえず一緒のことをやってみる。そうすると宇宙人は喜ぶし仲良くなれる。

宇宙人を心底理解することなんて不可能なのだから「なんか変なことしてるけど、あの宇宙人にとっては意味があるんだろう」という認識で良い。

 

それでいいんか

 

世界は割かし自分中心

 目からポロっと鱗が落ちた。

今まで人から変人扱いや「空気読め」と言われてきた私にとって「相手の方がイレギュラーな存在なんだ。」なんて思ってよいのか!?と疑念が沸き、先生にそう聞いても「いいのいいの。どうせ意味がなかったり、みんななんとなくやっていることだって多いし、みんな理由もわからず適当だったりするんだよ」とかる~く返ってきた。

そうか、そんなんでいいのか。

宇宙人は私じゃなくて、私以外が宇宙人だったのか。

もちろんそう言われたからって私が怒られたり変なことをしてしまったり納得できなかったりする部分が全部なくなったわけじゃないけど、心持は幾分か良くなったし行動にいちいち理由を求めることをしなくなった。

理由や意味がわからないからしない、じゃなくてとりあえず訳なんかわかんないけど同じことをやってみる、に少しだけ移行した。もちろんやりたくないことはやらなかったりするけど…。

 世界はどちらが正しい、これをしないのは悪というわけじゃなくてもっと自分勝手で自分中心でいいのかもしれない。割かし自分中心に生きていてもいいのかも。

私が理解できない人はみんな宇宙人だけど、宇宙人にだって行動の理由や訳はあったりなかったりしている。

なんでそれが私にはわからないんだろう、じゃなくて、宇宙人の考えることはよくわからんがまぁいいか宇宙人だもんな、でいいんだってさ。

 

そして宇宙人と結婚

相変わらず世界は宇宙人でいっぱいで意味の分からない行動を繰り返しているけれど、そんな宇宙人の中にさらに変わった宇宙人が現れた。

それが今の夫だ。

 夫は私のASD傾向のある行動を見ても罵ったりしない。むしろ笑ってくれる。

もちろん最初は少し揉めたり、私のできるできないがわからず戸惑ったりもしていたけれど今ではすっかり慣れたものでフォローもうまい。

私は感覚過敏や運動協調性障害、注意欠陥多動性障害睡眠障害など様々な生きにくさを抱えている。

そのせいで生活に色々な支障が出てくる。

例えば運動協調性障害。これは身体機能には異常がないのに脳が運動の指示や力加減の調整をできない障害で私はこれが顕著に出ていると思う。

そもそも体の重心が傾いていて歩き方もぎこちない。靴底は履いて一週間でどんどん減っていき1シーズンしかもたないし、重心が傾いているのでよく転ぶ。とくに絨毯張りの床は何度も毛躓いてしまい夫の腕をつかまなければ歩くのも辛い。

力の調整も苦手でペットボトルが開けられないくらい非力かと思えばシャーペンを手から血が出るまで強く握って壊してしまうこともある。

スポーツなんかもってのほか。でも学生時代は体育が必須だ。日常生活ですら体のコントロールが出来てないのにスポーツなんかできるはずもなく、体育の成績はいつも1か2。

団体競技では足を引っ張ってしまうため「同じチームになりたくない」「うわ、最悪。あいついたら勝てないじゃん。ずっとベンチにいて」とハブられたり、時には練習と称してボールをひたすら投げつけられたり、走っている途中に故意に押されて転倒したことも少なくなかった。

そんな私を夫は馬鹿にしたりしなかった。

すぐぶつけて傷を作る私に絆創膏を貼ってくれて、転ぶ私を起こしに駆け寄ってくれるそんな人だ。

友人家族を除いて、私を目の敵にする人が溢れたこの世界で寄り添おうとしてくれた優しい宇宙人。

そんな変わり者の宇宙人は私の夫になってくれた。

 

平凡な生活

 ASDの私と宇宙人の夫が結婚したところで生活に特別な変化はなかった。

私は相変わらずASDの特性丸出しで生きているし、夫も相変わらず変わり者の宇宙人だ。

結婚したからと言って私のASDが急になくなって普通のお嫁さんになったりなんかできやしない。

まぁそれはそれでいいのかもと思う。

私はこの地球でたった一人の地球人で、夫はそこに現れた変わり者の宇宙人のまま。

そんなちぐはぐな夫婦として私たちは暮らしていく。

それでいいのだ、きっと。